LINK UP!ソーシャルワーカーズ中毛「認知症の人と家族の会」講話と対話_開催報告
中毛地区協議会の定例会員交流企画「LINK UP!ソーシャルワーカーズ中毛オンライン」を開催しました。
今回は、公益社団法人 認知症の人と家族の会 群馬県支部代表の田部井康夫さんを講師にお迎えし、認知症の人と家族を取り巻く支援が、どのように生まれ、広がってきたのか、その歴史を中心にお話しいただきました。
講演の中で特に印象に残ったのは、現在のように認知症への理解や支援制度が十分に整っていなかった時代から、先人たちがその人を「認知症」という枠だけで捉えていなかったということです。認知症があるから何もできない人、支援されるだけの人として見るのではなく、その人にも、それまで歩んできた人生があり、大切にしてきたことがあり、役割があり、思いがある。
「認知症の人」として見る前に、まず「一人の人」として見る。
現在では「本人中心」「その人らしさ」といった言葉で語られることも多い考え方ですが、制度も社会の理解も十分ではなかった時代から、すでにそのようなまなざしで本人と向き合い、実践してきた人たちがいたことを学びました。そして、「家族だけでは抱えきれない」「本人が安心して過ごせる場所がほしい」「介護する家族にも休息が必要」といった本人や家族の声を受け止める中から、当時としては新しい取り組みであったデイサービスなどの実践が生まれ、少しずつ社会へと広がっていきました。
今では介護保険制度の中に位置づけられ、当たり前のように存在しているさまざまなサービスも、最初から制度として用意されていたわけではありません。目の前にいる一人の人を見つめ、その人と家族の暮らしの中にある困りごとに耳を傾け、「今、必要なものがないのであれば、つくっていこう」と動いた人たちの実践があり、その積み重ねが現在の支援につながっています。
1980年に家族や支援者たちの声から始まった「認知症の人と家族の会」も、「つどい」「電話相談」「会報」などを通じて本人や家族の声を受け止め、その声を社会へ届け続けてきました。今回、その歴史を学びながら、これは認知症支援だけの話ではないと感じました。
私たちソーシャルワーカーも、障害、高齢、生活困窮、子ども、医療など、さまざまな制度や分野の中で人と出会います。しかし、制度や診断名、年齢、障害、課題という「枠」からその人を見るのではなく、まず一人の生活者として出会うこと。
その人がどのような人生を歩み、何を大切にし、これからどのように暮らしていきたいのかを知ろうとすること。そして、目の前の一人の「困った」という声を、その人だけの問題として終わらせず、必要な支援や地域、さらには新しい仕組みへとつないでいくこと。
今回伺った認知症支援の歴史には、現在のソーシャルワークにも通じる大切な原点がありました。
制度から人を見るのではなく、人から制度や支援を考える。「認知症の人」の前に、「一人の人」である。
先人たちが当時から大切にしてきたそのまなざしを、私たちも日々の実践の中で受け継いでいきたいと思います。
ご講演いただきました田部井康夫さん、参加者の皆さまに心より御礼申し上げます。
中毛地区協議会では、これからも分野や所属を越えて、人と人、歴史と現在、そして地域の実践が「LINK UP!」する学びと交流の機会をつくっていきます。
(文責:中毛地区協議会長 山口怜生)

